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tfClient 練習セット

新規にtfClientをダウンロード、あるいは記録の消去を行った後は、タイピングの練習記録は空の状態です。 このアプリは、100打鍵以上の入力練習を20回以上行うことで、入力スキルと精度・集中力・安定度という3つの指標を表示します。 以下の文章は、本アプリの入力練習を行うのに適するように、適切な長さで20個のセクションに分割されていますので、お気に召しましたらアプリの操作法や使用感をつかむのにご利用ください。


セクション 内容 標準打鍵数
#1  不自然なほど透き通った青空の下に響きわたる、いつもと変わらない少女の歌声。
緑の絨毯 駈け抜けて 丘の向こうへ 一直線~
広々とした草原で、エメラルドの髪をひらひらさせながら歌い踊るその歌姫は、誰もが羨む世界的な大スターだ。
 軽快なステップを踏み、澄み渡る歌声を奏でる彼女の周りで、乱れることのない完璧なリズムを共有しているのは昔からの友達だ。彼女たちもまた十分に有名な歌手であり、それだけに共演する機会も少なくない。
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#2  歌いながらステップを踏んでいるうちに、彼女たちは見晴らしの良い丘の上まで進んでいたようだ。ちょうどそこで歌が終わった。
 「ねぇ見て!ここってこんなに高かったっけ?私たちの家がとっても下に見えるわ!」
来た道を振り返って、友達が言う。
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#3  高低差のある丘の麓には、ベージュ色の建物が規則的に立ち並ぶ。彼女たちは随分と幼いころからここで暮らしてきたので、もはやその風景に違和感を持つことはなかった。しかし、よく考えてみれば規則的にすぎるその並びは、多少の気味悪さがないこともない。 262
#4  そんな金太郎飴のように個性を欠いた建物の中に、ひときわ目立っている建物が一つだけあった。大きさは他の建物と大差ないのだが、正三角形を描くように三つの矢印が描かれている。加えて、建物の周りを一周して入り口を探しても、どこにも入り口が見当たらないことも不思議である。 286
#5  謎の多い建物だけに、彼女らを含めその付近の住人の間ではしばしば噂話のターゲットとなっていた。近くを夜中に通った時、何やら建物の中から何かが切り裂かれる音が聞こえたとか、伝染性の病気にかかっている人を隔離しておく施設だとか、あるいは死刑が確定した犯罪者を「処分」する処刑場だとか。真偽のほどは分からないが、そんなことがまことしやかに囁かれていた。 391
#6  歌って踊って疲れたのか、ぼんやりと遠くを眺めている彼女たち。涼しいというよりは若干寒いと感じるほどの風が吹き抜けていたが、火照った体には心地よい。そのとき、上空を矢印のような形をしたものが、建物の立ち並ぶ方角へ向かって飛んでいった。
 「久しぶりにマスター忙しいみたいね。」
 「ここのところ建物とか部屋の管理とかずっとしてなかったから仕方ないよね。」
ちょっと不思議なフィーリングを帯びたこの地域も、さすがに誰も管理するものが存在しないほったらかし状態、あるいは規則も法律もない無法地帯というわけではない。
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#7  人々から親しみを込めて「マスター」「管理人さん」などと呼ばれているその存在は、地域の建物やインフラの管理を担当する責任者であるようだ。地域の全域に道路が整備されているわけではないことや、何よりも全体を見渡せるという理由から、マスターは「ミニ飛行機」を主要な移動手段としていた。 292
#8  遠目からはちょうど白い矢印のような形に見えるそのミニ飛行機を久しぶりに見つけた彼女たちは、その行き先を目で追いかけていた。何やら建物へ訪れ、しばらく留まってまた別の建物へと移動するその姿は、それなりの距離からでも認識することができたのだ。 265
#9  「よし!歌も振り付けもバッチリみたい。風邪ひく前にさっさと帰って、来週の大舞台に向けてしっかり体力ためておかないとね。」
ほとんどすべての歯車がうまく回っているように思えるその日常は、今日も同じように大過なく終わろうとしている。
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#10  丘の向こうに落ちていく夕日を背に、そして近づく見せ場へ抱いている、期待と不安と緊張がないまぜになった高ぶる感情を胸に、彼女たちは各々の住む家へと消えていった。今日よりか少しだけ立派に歌や踊りを振りまく明日の自分を夢見ながら、ゆっくりと眠りについた。 259
#11  異変の前触れがやってくるのは、突然であった。目を覚ましたものの、さしあたって消化すべきスケジュールがなかったその少女は、睡眠でなまった身体をリフレッシュするために草原へ駈け出した。 178
#12  そこで彼女は、普段と少し様子の違うものの存在に気が付いた。伝言板に記された、やたら目立つ色の文字で書かれたメッセージである。伝言板自体は普段と何も変わっていないが、大きめの文字と独特の筆跡はそれなりの存在感を放っていたのである。 247
#13  あまり本を読まず、街の様々なところで目にする看板に書かれている文章にも目を通そうと思わない彼女であった。しかし、この時ばかりはその異様な雰囲気を感じてその内容を読み進めた。
 「こんにちは、管理人です。みなさんお元気ですか。突然のことで恐縮ですが、残念なお知らせがあります。私の都合により、ここの管理をできるのはあと一週間ほどになりました。できるだけの処置を行う予定ではありますが、それ以降、安全の保障をすることができません。みなさんには長い間お世話になりました。大変申し訳ございません、どうかお許しください。」
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#14  メッセージを読み終えた彼女だったが、内容のインパクトにもかかわらず、特に衝撃を受けたという様子はない。あの気まぐれなマスターのことである。管理をすっぽかしてしばらく姿を見せないことは何度もあった。今度もきっと何か別のことに気を取られているのだろう。彼女のマスターに対する認識はそのようなものであった。そして何よりも今日はエイプリルフールである。そんなつまらない手には乗らないわと言わんばかりに、伝言板を指さして彼女は笑った。 419
#15  メッセージの内容が多少気にかかっていた部分はあったものの、彼女たちの生活ルーチンにほぼ変わりはなかった。それぞれが持っている演奏のスタイルやこだわりについてお互い衝突する場面も多かったが、今までの練習成果が無事に本番で発揮され、輝く自分たちの姿を思い浮かべる心は一緒であったに違いない。 303
#16  本番を間近に控えたある日のこと。練習を早めに切り上げ、思い切り羽を広げる彼女たちの姿を見ることができた。世界的歌姫の座からの転落を恐れるかのように、練習を重ねる光景を知る人々もいる。こんなときがあってもいいよねと思えるような、どこかほっとする気持ちを与えてくれるような光景だ。今日もまた沈んでゆく太陽を見送ると、歌姫たちは普段より一足早く夢の世界へ旅立った。 399
#17  歌姫たちの望んでいたすがすがしい朝が、その草原地帯を再び訪れることはなかった。眠っていた歌姫の一人が外から差し込む強烈な光で目を覚まし、何事かと外に飛び出した彼女が見たのは、至るところにあがる火柱であった。一面の焼け野原である。何が起こったのかもわからないまま、目に涙を浮かべて仲間のもとへ走った。全員無事であるようだった。彼女たちは安堵の涙を見せていたが、冷静に考えると何かがおかしい。燃え上がる炎の横を駆け抜けているのに、熱を感じない。とても騒がしいはずなのに、淋しさを覚えそうなほど静かだ。徐々に透明になっていく友達の姿が、涙にゆがむ視界に見えた気がする。悪い夢でもみているのかなと正気を取り戻そうとした瞬間、彼女の意識が消えていくのを感じた。
 「さよなら…もっと歌いたかったな…」
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#18  どれくらいの時が流れたのだろうか。自身の存在を一度諦めた彼女は、どこか全く別の場所で意識を回復した。
 「ここってどこなの?私どうしたのかしら…」
そこは彼女の慣れ親しんだ場所ではないようである。周りを見渡すと、立ち並ぶベージュ色の建物や、例の謎だらけの建物を見つけることができた。草原の代わりに、寒色系の無機質なデザインが広がる空間であることが今までと違っていた。建物の位置関係が変わっていなかったことを頼りに伝言板があった場所へ向かった。そこには、見慣れていると同時に、以前よりずっと愛おしく感じる仲間たちの姿があった。全員の無事を確認し、ひとしきりその喜びを共有した。
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#19  「あなたたちの救出と、新しい住処の確保が間に合ってよかったです。身の危険を感じさせてしまって本当にごめんなさい。もう少し早く準備を始めるべきだったと反省しています。管理人より」
相変わらずの雑な字で、そんなことが書かれていた。マスターが乗った白の矢印は、のんきそうに東へ飛んでいった。
 「本当に死ぬかと思ったよね。でもあのマスターたぶん反省してないよ。」
新たな地で、彼女たちの日常はまた息を吹き返していた。
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#20  さすがに彼女らの出演は延期となってしまったが、新しい生活にすっかり慣れた彼女たちは頭をリセットして、延期された出演日に向けて練習を進めた。身も心も軽くなった彼女たちの大舞台は、大喝采の中幕を閉じた。
 今日もどこかで、その歌声と踊りは人々を魅了する。
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最終更新日: 2015/03/03